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オートデスク ニュース

瞬時に共有可能な現場の知見を蓄積することで、まだ見ぬ未来の建物の品質を担保する

TV コマーシャルでおなじみの戸建住宅のみならず、賃貸住宅や商業施設・物流施設、医療・介護施設など、多様な建築事業を展開する大和ハウス工業。その好調の裏には、若手・現場所長たちの情熱と、それを下支えする「デジタル・コンストラクション・プロジェクト」の存在がありました。今回は同社横浜支社関東工事部統括部長である石澤一晃氏と同部工事第一部で活躍する清水慶典氏にインタビュー。PlanGrid 活用の現在と未来についてうかがいました。

 

大和ハウス工業を牽引する建築事業

戸建住宅や分譲マンション、商業・物流施設、ホテルなどの建設から運営まで事業の多角化を進める大和ハウス工業。石澤一晃氏が率いる関東工事部は、商業施設部門・事業施設部門、すなわち物流施設や店舗、高齢者施設などのビルの建設を手掛ける部門。現在の大和ハウス工業を牽引する事業部門のひとつです。その好調要因を支えているのが、圧倒的な建設戸数だといいます。

「恐らくどの建設会社と比べても、圧倒的な棟数を建設しています。他社に比べて 1 棟あたりの受注金額が安価であるという点が理由の一つとしてあげられると思いますが、裏を返せば棟数をこなしつつ、いつでも安定した品質をお客様に提供するための努力を重ねているということでもあります」(石澤氏)。

安定的に高品質な建物をお客様に提供するためには、個人が経験を積んでレベルを上げることが重要だという意見もあるのは確か。しかし会社全体として考えると、個人が持っている技術力に頼るのではなく、デジタルの力を重要な技術力のひとつとして捉えたといいます。

「むしろこれからは、会社として成功や発展を続けるために、個人の技術力よりも組織的な技術力の方が重要視されるべきです。そうした考えの下、社長の肝煎りでスタートしたのが『デジタル・コンストラクション・プロジェクト』です。テクノロジーの力を活用して技術を標準化するという考えが根底にあります」(石澤氏)。

そのプロジェクト・メンバーとしてアサインされた石澤氏は、会社として戦略的パートナーシップを結んでいる Autodesk から、施工現場のデジタル化を推進するソリューションの一つとして PlanGrid の紹介を受けました。“とても未来のある、奥の深いソリューション”という印象を受けたといいます。

「現地を確認・チェックして、その状態を保存する、それを関係者全員ですぐに必要な情報を共有して見ることができる。さらには、タイムリーに社外や社内の担当者に必要な情報を発信できるという一連の機能が、様々な業務で応用できると直感的に感じました」(石澤氏)。

 

将来の建物の品質向上にも繋がっている

当初は PlanGrid を、お客様に引き渡す前に実施する竣工検査に活用しようと考えていた石澤氏。ところが説明を聞いているうちに、完成した建物の品質検査もさることながら、安全の検査やパトロールなど、現場を確認し、記録を残すという、もっと大きな意味でのクオリティチェックに活用できるのではないかという発想になったといいます。

「もちろん、従来もそういった点検業務は実施されていました。しかし、各々の作業によってフォーマットが異なる帳票があり、担当部署も違う。今までは部署ごとにバラバラだった帳票やデータを、PlanGrid を用いることで連携させていくができるのではないかと思います」(石澤氏)。

そこで石澤氏は、同じく関東工事部のメンバーである清水慶典氏を含む数人のメンバーに指示。Autodesk と共に、実用化、および現場浸透に向けての取り組みを開始。現場所長として活躍する清水氏は、PlanGrid に出会った瞬間から、その可能性を感じ取ったといいます。

「従来の紙の帳票による運用では、担当者が持っている情報の共有や意思決定が決してスピーディーには行われてはいませんでした。ところが PlanGrid であれば、現場にタブレットさえあれば非常に簡単に、しかも即時で、不具合の根本原因や指摘事項などの情報共有が可能となります」(清水氏)

初めて PlanGrid を使って入力した時点で、現場における意思決定の一助となり、業務効率が上がる。時間や労力の大幅な削減に繋がる可能性があると実感したといいます。

「そして何よりも、それぞれの現場で活躍する技術者たちが持つ知見を PlanGrid に集約し、蓄積することで、今後、そうしたデータを未来に活かすことができるのではないかと感じました」(清水氏)

実際に活用してみると、さらに様々なメリットを実感したという清水氏。多忙を極める現場の最前線における“使い勝手の良さ”に注目します。

「例えば、帳票をわざわざ作らなくても、PlanGrid に図面を 1 枚入れれば、それで検査や安全、現場巡視の準備は終了します。現場に赴き、PlanGrid 上に存在するスタンプに現地情報や写真などを入れてしまえば、わざわざ事務所に戻って帳票をまとめることもなく、その場で作業を終えることができます。写真もスマートフォンで撮影してすぐにアップロードが可能で、図面の場所に写真を置くだけで、誰かにメールで送る必要もなく、瞬時にプロジェクト・メンバーで情報共有が可能です」(清水氏)

PlanGrid を導入することで、その作業が終了しているのか、継続しているのかが、スタンプひとつで見極めることが可能に。現場巡視や安全確認など、従来は複数の担当者が現場に足を運んでいた作業が、PlanGrid を介して一元管理できるようになりました。しかもそれが現場に行かなくても、事務所で確認することができるため、業務効率は格段にアップ。それは工事の品質にも大きな影響を及ぼしているといいます。

「やはり、これまでの指摘事項や技術情報を共有し、事前に回避できるようになった点は大きいと思います。それは目先の成果だけでなく、現在の若年層が担っていく、将来の建物の品質向上にも間違いなく繋がっていくと思います」(清水氏)

 

PlanGrid の活用は未来への投資

PlanGrid の活用アイデアはさらに広がりを見せています。現在は、安全パトロールや様々な検査においてはもちろん、工事を実施する前段階の現地調査においても活用を進めています。

「現場所長が配属される前段階において、管理職による現場調査が行われます。車の乗り入れや隣の建物、周りの塀の状況やインフラなどの調査をしますが、それも PlanGrid でできるのではないかと考えました。ですから、現場管理者だけでなく管理職も使いこなせるようカスタマイズしてほしいと、清水に依頼して運用準備を始めているところです」(石澤氏)

現在は、清水氏を中心に普及活動が進められ、PlanGrid を活用する人員が増えつつある状況ですが、石澤氏は満足していません。石澤氏が目指すのは、現場の誰もが PlanGrid を活用できる世界、そのために地道な取り組みを続けていくといいます。

「今はテクノロジーに対する知識レベルが比較的高いメンバーが取り組んでいますが、現場の担当者全員に普及したときにどうなるのかというのは、これからの課題です。まずはより多くの人財にこのテクノロジーに触れてもらうことが必要だと思っています」(石澤氏)

石澤氏が管掌する神奈川県、千葉県、茨城県の各事業所には目標を設定し、事業所内で必ず最低 2 人に PlanGrid を実際に現場で使ってもらい、意見を共有する機会を持っているといいます。

「チャレンジしたメンバーが他のメンバーに広めていくという活動を地道に続けていけば、やがて会社全体に浸透していきます。そこは現在、Autodesk 様と一緒になって考えながら進めている段階です」(石澤氏)

現場に水平展開するためには、カスタマイズ(下準備)が必須だと清水氏は言います。

「とにかく簡単に使えるよう徹底的にカスタマイズしていきます。まずは“そこにあるものを使うだけで、簡単にできる”と誰もが感じるようなレベルに持っていきます。色々な人の知識を収集し蓄積することで、若い現場管理者や経験の少ない現場管理者が、そのキーワードを選ぶだけで指摘事項を閲覧。現場ですぐに対処ができるようになれば、目に見える効果として、その価値を現場に理解してもらえるようになると思います」(清水氏)

そして石澤氏は、PlanGrid の活用は未来への投資だと考えているといいます。

「これまでは、担当者によってアウトプットの違いがあり、それを皆でカバーして品質を保ってきました。これからは、クラウドにデータを蓄積し、繋ぎ、情報として引き出すということをくり返すことによって品質の安定化、いや品質が安定するとともに、担当者のレベルが高くなることは間違いありません」(石澤氏)

その一方で、“建設業界の技術力は本当にそれでいいのか”という懸念もあるというが、テクノロジーとヒューマニズムの両立がカギになるといいます。

「現場で汗水たらして建設技能労働者と様々なことを共有しながら身に付ける技術力もとても重要です。なぜなら、私たちは人と仕事をしています。デジタルで良品は作れるかもしれませんが、建設技能労働者たちとの信頼を作ることはできません。デジタルを駆使しながら現場でたたき上げられた人間こそが、結局、建設技能労働者とのコミュニケーションも正確に取れるのだと思います。PlanGrid の指導も重要ですが、それ以外の指導もおろそかにできません。5 年~ 10 年という期間で日本の建設業が 180 度様変わりするとは思っていませんが、いずれ清水の後輩たちが楽になる、楽しく仕事をしながらお客様に価値を提供できるようになると期待しながら、今は取り組んでいます」(石澤氏)

 

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