国際的な冬季スポーツイベントが開催され、世界中の注目を集めたなか、その舞台裏では、サステナブルで将来にわたって地域に価値をもたらすインフラが整備されました。これを主導したのが、政府系インフラ機関 SIMICO(Società Infrastrutture Milano Cortina 2020–2026 S.p.A.)です。
SIMICO は数十年ぶりとなる大規模な公共インフラ計画を担い、北イタリア全域で交通ネットワークから重要な公共事業、スポーツ関連施設に至るまで、約 100 件のプロジェクトを主導してきました。総額約 34 億ユーロ(約 6,200 億円規模)にのぼる公共投資は、厳格な公的監督と国家的な期待のもと、すべて明確な期限を遵守して実行されました。
SIMICO の使命は、交通ネットワークから必須公共施設に至るまで、多くのプロジェクトを同時並行で進めることです。その実現には強固なエンジニアリングだけでなく、プロジェクト間の調整、ガバナンス、情報共有の新しいアプローチが不可欠でした。技術担当ディレクターのルチア・サモラーニ氏は「私たちは未来を見据え、各プロジェクトを技術的・組織的進歩のモデルへと変革することを求められました」と述べています。
こうした姿勢は、相互につながったプロジェクト推進のアプローチを形づくりました。それはこの国際的なイベントを支えるだけでなく、その後も、これらのプロジェクトが恩恵をもたらす地域社会に長く価値を残すことを目的としたものです。
設計から施工・運用までをつなぐデジタル基盤
SIMICO は、複数の大規模プロジェクトを同時に進めながら関係者全員をつなぎ、意思決定を迅速化するために、デジタル統合プラットフォームを構築しました。中心となるのが、現在は Autodesk Forma® の一部である Autodesk Construction Cloud® です。この環境により、設計、ドキュメント管理、施工計画、進捗管理が一元化され、同じ情報をリアルタイムで共有しながら作業を進めることが可能になりました。
プロジェクト環境の中核を担うのが Autodesk Docs です。SIMICO はこれを共通データ環境(CDE)として活用し、文書管理から承認プロセス、さらにはプロジェクト横断の監督業務までを一元化しています。
「Autodesk Docs によって、すべての関係者が常に各文書の最新版で作業できる環境が確保されました。Autodesk Docs の導入は、特に文書やデジタルモデルに関わるプロセスにおいて、私たちの貴重な時間を大幅に節約しました。ケースによっては、工程を数日、あるいは数週間単位で短縮できたこともあります」と、SIMICO のデジタルガバナンス責任者であるフランチェスコ・カッピッリ氏は述べています。
設計の調整において、SIMICO は BIM Collaborate Pro を活用し、複数分野のモデルをクラウド上で統合しています。これにより、チームは潜在的な干渉を早期に発見し、変更内容をより明確に追跡できるようになり、問題が施工現場に持ち込まれる前に手戻りを削減することが可能になりました。
その結果、プロジェクト間の調整はより円滑になり、課題解決の早期化が実現しました。複数のプロジェクトが固定された期限のもと同時に進行する状況においても、スケジュールを確実に遵守できるという確信が高まりました。
現場と計画をつなぐ実装と将来の運用
こうした情報連携は、現場においても同様に機能する必要がありました。複数の拠点に施工チームが分散するなか、SIMICO は現場の担当者が常にオフィスのチームと同じ情報をもとに作業できる環境を整える必要がありました。
Autodesk Build を活用することで、施工チームは現場から最新の図面やモデルを確認し、課題を報告し、RFI(情報提供依頼)に対応し、進捗状況を直接共有できるようになりました。オフライン環境であっても利用可能です。
「モバイルアプリは、業務効率を大きく変革する存在でした」と、SIMICO の BIM マネジャーであるマルコ・イセルニア氏は述べています。「今ではオフィスと現場が同じ情報を共有しながら業務を進めています。」
喫緊の課題はプロジェクトの確実な遂行でしたが、SIMICO はその先も見据えています。Autodesk Tandem を活用し、設計・施工段階で蓄積された重要な情報を運用フェーズへと確実に引き継ぐデジタルツインを構築しています。数十億ユーロ規模の公共事業で得られた知見が、引き渡し後に失われることのないようにしています。
これにより、長期的な保守管理、性能モニタリング、そしてよりサステナブルな資産管理を支える基盤が整備されます。
「私たちの責任は、建設の完了で終わるものではありません」とサモラーニ氏は強調しています。「これらの事業を効果的かつサステナブルに管理していくことまで含まれています。」
大会後も続くデジタル・レガシー
国際的な冬季スポーツイベントが世界の注目を集めたなか、SIMICO の取り組みは、強いビジョンと確かな連携体制、そして共通のデジタル基盤が組み合わさることで、大規模かつ複雑な公共インフラプログラムを着実に実現できることを示す好例となりました。この規模と複雑性を持つプログラムを成功に導くには、チーム間の迅速な意思決定、透明性、そして信頼関係が不可欠です。さらに、その先を見据えた明確な計画も求められます。
Autodesk にとっても、SIMICO のようなプログラムに伴走できたことは、私たちの取り組みの意義を改めて示す重要な機会となりました。公共機関が人・データ・意思決定をより良く結び付けられる環境を整えることで、本当に重要な成果に集中するための時間と確信を得ることができます。その結果として生まれるのは、長期にわたり機能し、地域社会を何十年にもわたって支え続けるサステナブルなインフラです。
※本記事は、米国 Autodesk 社が 2026 年 2 月 5 日(現地時間)に発表したニュースブログ記事を抄訳・再構成したものです。
執筆:AEC インダストリー戦略担当バイスプレジデント ニコラ・マンゴン
■Autodesk, Inc. /オートデスクについて
1982 年に設立した Autodesk は、米国カリフォルニア州サンフランシスコに本社を構え、現在世界約 40 カ国・地域で事業を展開している「デザインと創造」のプラットフォームカンパニーです。サステナブルな建築物から次世代自動車、デジタルファクトリー、最先端技術を駆使した映画やゲームにいたるまで、ありとあらゆるものづくりのデザイン・設計・創造をテクノロジーの力でサポートしています。建設、製造、メディア & エンターテインメント業界における業務の効率化・自動化を促進する業界に特化したソリューションを搭載したインダストリークラウドを提供するほか、部門間のみならず業界全体の連携を実現し、業務プロセスを横断的にサポートする「デザインと創造のプラットフォーム」を展開し、より良い未来を築くべく、新たな可能性に挑戦するすべてのイノベーターを支援しています。詳細については、https://www.autodesk.com/jp をご覧になるか、Autodesk のソーシャルメディアをフォローしてください。 #MakeAnything