「車とロボットを組み合わせたとしたらどうなるのか?」 ヒョンデ グループのジョン・スー副社長のこの問いに、多くの人はこう答えるでしょう。「トランスフォーマーだ!」
150 年の歴史がある自動車業界は大きな転換時期に指しかかっており、イノベーションが求められています。厳格な環境規制や、既存市場の構図を破壊する電気自動車(EV)のスタートアップ企業に加え、個人の移動習慣、輸送パターン、グローバル サプライチェーンの変化などとも相まって、安定した地位にあった自動車メーカーも早急なイノベーションが不可避となっています。既存の、そして未来の車はつい数年前の車よりも多機能で順応性に優れ、また、スマートで安全性が高く、燃費が良く、サステナブルであることが求められます。
スー氏は、ヒョンデ グループによるこうした課題への対応をまったく新しいアプローチで指揮しています。ヒョンデのニュー ホライズンズ スタジオでは、車輪と「レッグ(脚)」を組み合わせて自動操縦することで、かつてないほど機動性に優れた地上車両が生まれると構想しています。このスタジオでは、オンロードとオフロード両方での移動を強化する新たな市場に事業を拡大することで、ヒョンデ グループの中核である自動車ビジネスに貢献しようとしています。80 年代に人気を博した「車に変身するロボット」というおもちゃのアイデアを生かした豊かなイマジネーションを持つ幹部を持つことは、戦略的な強みでもあります。
「歩くことができる車があったなら何ができるようになるのか?」と、スー氏は考えを進めました。その結果、定評のあるデザインスタジオ、Sundberg-Ferar とのコラボレーションによって、ヒョンデは「Elevate」という歩行可能なコンセプト カーを生み出し、CES 2019 で発表しました。「究極のモビリティ ビークル(UMV)」と呼ばれるエレベートは、4 輪駆動の車両から、4 本足で歩く爬虫類のような「歩くマシン」に形を変えます。そして、どんなに優れたオフロード車でも到達できないような地形でも走行できるようになります。車体部分と搭乗者を完全に水平に保ちながら、壁を登り、様々な地形を乗り越え障害物に接近できるということで、発表当初から大きな反響がありました。
この種の車両の用途としては悪路での輸送、地表探査、緊急時の捜索と救助などが挙げられます。また、移動の自由が制限されている人たちが外出する際の深刻な問題も解消することができます。
車両として運転することも歩くこともできるこのユニークなモビリティ ソリューションには、デザインやエンジニアリングにおいて多くの困難な課題がありました。特に難しかったのは、絶えず進化を続ける輸送業界の要件に対応することでした。これまでの世代の類似部品よりも軽量かつ強力な部品を作る必要がありました。こうした「軽量化」に挑むデザイナーやエンジニアは、メタリック フォーム、カーボン ファイバー、新たな金属合金などの革新的な材料や、ジェネレーティブ デザインなどの活用をソリューションに検討することがよくあります。これはまさにオートデスクのツールと専門知識が活きる分野で、ここにヒョンデとオートデスクのコラボレーションが始まりました。
スー氏は次のように述べています。「ジェネレーティブ デザインによって、人が持つアイデアの可能性は広がりました。ジェネレーティブ デザインを活用することで、たった 1 人のデザイナーやエンジニアが数十、あるいは数百の異なるデザイン パターンを試行できるので、思いもよらない新たな発見が可能になり、複雑な問題にも対処することができるのです。つまりデザインの方向性を決定するには、これまでと同様に人が非常に重要な役割を担っています。デザイン プロセスに不可欠な部分として、常に人の目、人の心や魂は必要なのです。」
コンセプト カーであるエレベートでは、「レッグ(脚)」の各関節部分に高トルクの電気モーターが採用されています。そのため、これを構成する部品は強く頑丈なものでなければなりません。一方で、車両の操作性と荷重の面から、この種の部品やインモーター駆動の車輪、すなわち「フット(足)」部分は軽量であることが求められます。これ以外にもさまざまな目標を達成するため、そして特にグローバルに事業を展開しているヒュンダイにとっては、全世界の異なるチームやグループ企業でアイデアを簡単に共有できるデザインやエンジニアリングのツールセットが不可欠です。
このように現代的なチームのためのツールを作り、クラウドや共通のデータ プラットフォームを活用して全員が同じ仮想ページで作業できるようにすることは、7 年以上前にオートデスクの Fusion 360 プラットフォームを開発したときから最も重視してきた点です。デザイン チームやエンジニアリング チームはシームレスなファイル共有によって、デザイン、エンジニアリング、製造に関して同じ言葉でコミュニケーションできるようになるため、プロジェクトに要する時間の短縮や、不満の解消が可能になり、プロジェクトの開始から終了までの細部の調整をすることができます。
Elevate は現時点では 5 分の 1 のサイズのプロトタイプですが、今後もこの魅力的で革新的なヒョンデ プロジェクトからは目が離せません。アニメの「トランスフォーマー」にインスパイアされたこの車体には、デザイン、エンジニアリング、製造の間の障壁を打ち破り、データの標準化によって広範でシームレスなコラボレーションを実現し、ジェネレーティブ デザインのような最先端のクラウドベース プロセスの活用を可能にする、新しいプラットフォームの強みが形となって詰まっているのです。
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