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オートデスク ニュース

Autodesk 主導のコラボレーションにより、手頃な価格の住宅のための AI を利用した気候に優しいソリューションが実現

1989 年、カリフォルニア州ウェストオークランドにある Phoenix Ironworks 製鉄所は港に近い狭い土地へ移転しました。建物と設備は解体され、州間高速道路 I-880 号線の隣に 5 エーカー(約 2 万平方メートル)分のコンクリート スラブが残されました。地域の人口が増え、建設費が上昇し、住宅不足が喫緊の課題となっているにもかかわらず、30 年近くの間、この土地は空き地のままか、十分に活用されることなく放置されてきました。

<カリフォルニア州ウェストオークランドにあるこの空き地は、持続可能で手頃な価格の集合住宅「The Phoenix」(全 316 戸)へと生まれ変わります。>

 

しかし、1 年以内に、この土地は住宅と気候変動の解決策を模索する建築家、エンジニア、建設業者のイノベーション ビレッジへと生まれ変わります。設計から建設までの全工程で、これらのチームとそのプロジェクト データを 1 つにつなぐデジタル スレッドとなるのが、Autodesk のデザインと創造(Design & Make)のプラットフォームです。

「The Phoenix」と呼ばれるこの新しいプロジェクトは、持続可能で手頃な価格の住宅 316 戸で構成されます。建設に伴うコストと、時間、二酸化炭素排出量は、サンフランシスコ・ベイエリアの一般的な集合住宅の約半分に抑えられる予定です。

<The Phoenix の建設に伴うコストと、時間、二酸化炭素排出量は、サンフランシスコ・ベイエリアの一般的な集合住宅の約半分に抑えられる予定です。>

 

これを可能にすべく、幅広い専門分野のメンバーからなるチームは、Autodesk の強力なプラットフォームを利用して、プロジェクトのライフサイクル全体においてデータとワークフローを共有し、AI によって得られるインサイトを活用することにしました。プロジェクトの早い段階で、チームはオペレーショナル カーボン(運用時の二酸化炭素排出量)、 エンボディド カーボン(建材の製造、輸送、設置に起因す二酸化炭素排出量)、コスト、居住性の目標に関して、データに基づくトレードオフを行いました。その後、過去のプロジェクトのユニット カタログを利用して、再利用可能な設計情報を用いることで時間を短縮し、リスクを軽減しました。そして最終段階として、現在、物理的自動化とデジタル自動化を組み合わせることで、効率的で、かつ住人に喜ばれる一連の建物を建設しているところです。

<幅広い専門分野のメンバーからなるチームは、Autodesk のプラットフォームを利用して、オペレーショナル カーボン、 エンボディド カーボン、コスト、居住性の目標に関して、データに基づくトレードオフを行いました。>

 

AI を使った設計により資金調達と居住性の向上が可能に

The Phoenix は California Housing Accelerator プログラムのもと進められています。同プログラムは、従来の設計・建設手法ではとうてい間に合わないようなタイトなスケジュールでの建設が可能な、手頃な価格の住宅プロジェクトに対し、大きなインセンティブを提供するものです。

このような資金調達を受けるのに必要なイノベーションは、設計段階から始まります。Autodesk と MBH Architects(小売、サービス業、高密度住宅設計を専門とする創業 34 年の成長企業)は、The Phoenix を利用して、新しいテクノロジーを試し、従来のワークフローを変革しています。

社長のライアン・マクナルティ(Ryan McNulty)氏は、MBH Architects を未来へと導いています。「英語ではよく、『This is how we have always done it(いつもこうしてきたから)』と言いますが、これはたいへん危険な考え方です。」とマクナルティ氏は言います。

<複数の異なる設計がそれぞれのプロジェクト ゴールにどのような影響を与えるのかを視覚化するのに、Autodesk のテクノロジーが役立てられました。>

 

初期段階の設計で Autodesk FormaTM を使用することで、MBH Architects は複雑なプロジェクト ゴールを達成するための多様なオプションをすばやく調査できています。建物のフロアを増やす、建造物の位置を北または南に動かす、遊び場や緑地を土地の端から中心部へと移動させるといったことにより、コスト、二酸化炭素排出量、居住性の評価値が変わってきます。

Forma では、過去のプロジェクトの構成要素を使って設計を開始し、Autodesk AI を利用して配置の仕方を決めることができます。また、リアルタイムの性能分析を確認して、最も望ましい結果が得られる設計にすばやく的を絞ることが可能です。

<MBH Architects では、過去のプロジェクトのユニット カタログを利用することで、 最も望ましい結果が得られる設計にすばやく的を絞ることができました。>

 

マクナルティ氏はこう話します。「最終的には、住宅を建てようとしているわけです。このツールを使えば、その工期を短縮できます。Autodesk のツールと新しいワークフローを利用することで、通常は 2 週間かかる初期設計パッケージの作成を 6 時間で終わらせることができました。」

 

工業化された建設により、建築プロセスの予測可能性が向上

設計の加速化と改善に加え、建設を変革する大きなチャンスが存在します。世界の人口は今後 30 年で 20 億人増加すると予想されます。都市に暮らす人々のために十分な住宅、職場、学校を確保するには、 ニューヨーク市1つ分に相当する数の建物を 2050 年まで毎月建設し続ける必要があります。同時に、建築環境の正味の二酸化炭素排出量を削減しなければなりません。

現在の建設プロセスはあまりにも時間がかかり、二酸化炭素を大量に排出することから、この課題に対処することは不可能です。建設の改革が必要であり、そのための 1 つの方法として、工場で建物を製造するというものがあります。これにより、一度建てたら終わりではなく、建物をより製品に近いものにすることができ、安全性と信頼性を高めつつ、無駄、時間、コストを節減することが可能です。このような製造原理を建築環境に適用することは、工業化建築と呼ばれています。

<Autodesk のテクノロジーは、過去のユニット カタログの使用を通して、プロジェクトのエンボディド カーボンとコストを予測するのに役立ちました。>

The Phoenix の建設を担当する Factory_OS は、工業化建築のための画期的な手法を編み出しました。工場での高速生産を利用してハウジング モジュールを構築し、それらをプロジェクトの現場までトラックで運び、クレーンで組み立てることにしたのです。設計から、製造、入居までのモデルの移行を迅速に進めるために、チームは Autodesk のクラウドベースのワークフローをうまく利用して共同作業を行なっています。

プレハブにフォーカスしたこの革新的なプロセスにより、従来の建設現場の予測不可能性が解消されます。さらには、設計、建設、製造のワークフローを統合することで、完成に要する時間が大幅に短縮されます。従来のプロセスでは通常 1 年近くかかるのに対し、The Phoenix のユニットは 10 日で組み立てが終わります。

<The Phoenix のモジュールは工場で構築された後、プロジェクトの現場までトラックで運ばれ、クレーンを使ってわずか 10 日間で組み立てることが可能です。>

 

Factory_OS の建築&エンジニアリング部門のバイスプレジデントであるアンドリュー・マー(Andrew Meagher)氏は次のように述べています。「モジュール式住宅ではある程度の確実性が確保されるため、設計や居住性など、重要な事柄に集中して取り組めます。これは、データ駆動型ソフトウェアのワークフローにも当てはまります。あらゆる所得層の人々に手頃な価格で住宅を提供する優れたプロジェクトにするために、より多くの時間を割くことが可能です。」

 

建物のカーボン ネガティブ化を可能にする新建材

持続可能で手頃な価格の住宅を立てる際、問題になるのが、建物のファサードです。多くの場合、ファサードは建物のエンボディド カーボンの 20% 以上を占めます。また、耐久性や耐火性といった厳しい性能要件が定められているため、低炭素建材をみつけるのは容易ではありません。それだけでなく、ファサードの建設には往々にして時間がかかります。Factory_OS の住宅モジュールは、現場で 10 日ほどで組み立てることができます。これに対して、ファサードは設置に半年かかることもめずらしくありません。これは、複数の独立層を設置するのに、足場とさまざまな下請け業者が必要なためです。

<従来のファサードの組み立てにはおよそ 6 か月を要します。これに対して、The Phoenix 用に開発された新しいプレハブ パネルは、所要時間がわずか 10 日に短縮されています。>

 

The Phoenix に向けて、Autodesk では、MBH Architects、Factory_OS、バイオマテリアル会社の Ecovative、建築外壁コンサルタントの Heintges、およびファサードに高度な複合材料をいち早く使用している Kreysler & Associates など、複数の協力企業とともに新たなアプローチを模索しました。チームは協力して、36 フィート(約 11 メートル)長の革新的なプレハブ ファサード パネルを完成させ、これにより建設時間とエンボディド カーボンの大幅な節減が実現しました。

パネルの製造は、Ecovative から始まります。ここでトウモロコシの茎葉などの農業副産物と、マイセリウム(菌糸体)というキノコの根っこに相当する部分を混ぜ合わせて、持続可能なバイオマテリアルを作ります。Ecovative によりカスタム設計されたマイセリウム パーツは、Kreysler & Associates が製造した繊維強化ポリマー(FRP)シェル内の芯材となります。

マイセリウム芯材は炭素隔離を可能にし、FRP シェルは耐久性を提供します。こうして、カーボンネガティブな特大パネルを使った前例のないファサード システムが完成しました。パネルを製造するプロセスでは、成長する過程で空気中の炭素を吸収する植物を使った材料が大量に使用されるため、排出される炭素よりも多くの炭素が吸収されることになります。

<The Phoenix の建設時間とエンボディド カーボンを大幅に節減する、前例のないプレハブ ファサード パネル。>

 

これらの新型パネルは、構造、防水、耐火、断熱、吸音という 5 層のファサード性能を備えており、現在の建築基準法や工法でそのまま使用できます。

 

未来の建築を推進する拡張可能なプロセス

これは始まりにすぎません。The Phoenix から生まれた探求と発明は、将来のプロジェクトに向けた一般化が可能なものばかりです。Factory_OS は、この先、手頃な価格の住宅プロジェクトで新しいデータ交換ワークフローを使用する予定です。MBH Architects では、Forma と The Phoenix の成果ベースの設計手法を、ライフ サイエンスに特化したビルなど、住宅を超えたプロジェクトに適用しています。また Ecovative と Kreysler & Associates は、このプロジェクトをカーボンネガティブな建物のファサード システムの商業開発に向けた重要な第 1 歩と捉えています。

こうした前向きな取り組みは、The Phoenix  のようなプロジェクトにより、地域だけでなく全世界に影響を与えられるかもしれないという希望を抱かせてくれます。これらは、ウェストオークランドの住民に高品質で低炭素の住宅を提供するだけでなく、建築環境を変革するテコとなり得るものです。要するに、今回の実証プロジェクトを経て、規模を拡大する準備が整ったことになります。

執筆: Director, ACC Industry Futures, Autodesk/デヴィッド・ベンジャミン

 

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