twitter youtube facebook linkedin email

オートデスク ニュース

Coral Maker オートデスクが人工知能と最先端製造技術を融合し、世界のサンゴ礁の再生を推進

サンゴ礁ができるまでには 1 万年から数千万年かかりますが、サンゴ礁の死滅にはわずか数週間しかかかりません。

繊細なサンゴが育つには十分な日光と、きれいで透明な海水が豊富に必要です。そして、暖かい海水が必要となりますが、海水温が高すぎてはいけないという、完璧な条件が必要です。

<西オーストラリアのサンゴ礁の調査に生涯を費やしてきたタリン・フォスター博士。博士が設立したネイチャーテック企業のスタートアップ、Coral Maker は、サンゴ礁再生のインパクトを高めるために製造技術を駆使>

ところが、現在の状況は決して良好とは言えません。海水温度は気候変動の影響で上昇し、悲劇が生じつつあります。このままでは 2050 年までに、地球上で最も生物多様性に富んだ生態系であるサンゴ礁の 70%~90% が失われると予想されています。

<世界の海水の温度上昇により、サンゴ礁の 50% がすでに失われ、その数はさらに増加する可能性も>

国連の世界海洋デーに合わせて、Coral Maker という会社が行っている取り組みを紹介できたことを嬉しく思います。より良い環境と健全な地球の保護活動を支援し、その取り組みを行っている人たちをサポートすること。それこそ私が建築家になった理由であり、現在の  Autodesk Research での活動を誇りに思う理由でもあります。

Coral Maker は、製造技術を駆使してサンゴ礁の再生を大規模に実現します。オートデスク と Autodesk Foundation (オートデスク基金)は、プロボノ支援、デジタルツール、人工知能技術、ロボティクスの専門知識を提供しています。こうした協力により、Coral Maker は西オーストラリア州沖でソリューションを試験的に導入するという大きなマイルストーンを達成しました。そして現在、年間数百ヘクタールのサンゴ礁を再生するというビジョンを実現するための投資を募っています。

<オートデスクの協力のもと、Coral Maker は、既存の石工製造技術と再生建設資材を使用して、サンゴ礁再生用の骨格を現地で安価に製造する方法を開発>

Coral Maker の創設者であるタリン・フォスター博士は、先日公開された短いドキュメンタリービデオの中で、「海水温度の上昇は 6 年連続で過去最高を記録し、すでに世界のサンゴ礁の約 50% が失われました。現在、サンゴ礁の再生は非常に小規模で行われており、多くが手作業となっています。現在進行中の再生プロジェクトでは、年間 1 ヘクタール程度です。Coral Maker の技術と、より大きなサプライチェーン、そしてこの産業の発展により、年間 100 ヘクタールの再生が可能となります」と述べています。

ひらめきの瞬間: サンゴ礁再生に向けた大量生産

フォスター博士は、西オーストラリアの自然豊かな海岸で砂と海水に触れて育ち、幼少期からニンガルーやアブロルホス諸島のサンゴ礁でシュノーケリングを楽しんでいました。そのことから、サンゴに対する情熱を生涯持ち続けるようになり、マンタを探し、サメと泳ぎ、ターコイズブルーの海に心を動かされたのです。

博士の実家は、石灰岩やコンクリートブロックを商業的に大量生産するビジネスを営んでいます。しかし、博士は海に対する熱い思いを貫くことを選び、サンゴの生態を専門に海洋生物学を学びました。

<サンゴ礁や砂浜に触れて育ったことから、家業の製造業ではなく海洋生物学の道に進み、現在はその 2 つの融合に取り組むタリン・フォスター博士>

2016 年の夏、壊滅的な世界規模のサンゴの白化現象によって、フォスター博士が研究していたオーストラリアのサンゴ礁が大きな打撃を受けました。サンゴ礁保護区全体が崩壊したのです。60% から 90% のサンゴが壊滅し、同時にサンゴ礁に依存していた多くの魚や海洋生物も死んでしまいました。

フォスター博士の幼少期の遊び場が、気候変動の影響で破壊されてしまったのです。

その夏に深い痛みを伴う体験をしたことがフォスター博士の人生を変えることになり、サンゴを救う仕事に従事するようになりました。しかし、現在行われているサンゴ礁再生の取り組みは、劣化のスピードに追いついていないのが現状です。そんな時、幼少期の経験からひらめきが生まれました。 「実家の石工業で使われているような大量生産技術を、サンゴの保全に応用できないだろうか?」と考えたのです。

フォスター博士はフルブライト奨学金でサンフランシスコとカリフォルニア科学アカデミーで学んだ後、オンサイト レジデントとして、オートデスク テクノロジーセンター研修プログラムに参加し、北米、そして英国のオートデスク社員と連携してきました。オートデスクは彼女のプロジェクトに、人工知能とロボットによる自動化、製品設計とエンジニアリング、高度な製造のエキスパートを提供しました。

そして、そこからアイデアが発展したのです。

高度な製造技術、人工知能、ロボティクスが救いの手に

Coral Maker は、家業の石工製造機械と建設業から出る廃石材を利用して、サンゴの成長に最適な環境を提供する骨格(スケルトン)という石の土台を大量生産しています。骨格は、花壇のような役割を果たします。人工知能が制御するロボットアームが、生きたサンゴ片をシードプラグに植えつけ、骨格に装着します。

サンゴ片を植えつけられた骨格は、海の中の最適な場所に「定植」され、そこでサンゴは成長し、骨格の表面を覆っていくようになります。これは 12~24 カ月で大人サイズになります。サンゴが自身の骨格を一層ずつ成長させていくのには何年もかかりますが、それよりもはるかに早く成長するのです。

<Coral Maker の製造工程では、1 日に最大 1 万個のサンゴ用の骨格を作成でき、年間最大 100 ヘクタールのサンゴ礁の再生を実現>

サンフランシスコのテクノロジーセンターに所属するオートデスクの人工知能に携わっている研究者たちは、ロボットアームの開発およびトレーニングに協力しました。英国バーミンガムのテクノロジーセンターに所属するコンサルタントたちは、オートデスクのデザインと創造( Design and Make)のプラットフォームの主要なテクノロジーの一つである Fusion 360 を使用して、骨格、シードプラグ、トレイ、石工機械をサンゴ骨格製造機に変換するコンポーネントを設計・試作しました。オーストラリアでは、フォスター博士の実家の工場がその製造工程を実証しました。また、Fusion 360 のクラウドコラボレーション機能により、地域や時差を越えてグローバルチーム全体がつながっています。

開発した技術は、現地で調達した骨材ミックスを使って、再生現場の近くで簡単に展開できるように設計されています。

このシステムにより、1 個あたり 6~8 個のサンゴ片を装着できる骨格を、1 日あたり最大 1 万個、つまり合計 6~8 万個のサンゴを安価かつ迅速に生産することができます。フォスター博士は、サンゴ礁を再び生き返らせるため、毎年数百万から数千万個を供給することを目標としています。

「オートデスクとの連携により、生物学とテクノロジーとの間に素晴らしい結びつきが生まれました。この結びつきによって、私たちは、ほんの数年前には想像もできなかったスピードでサンゴ礁を回復させる新技術を開発することができました。また、この規模のサンゴ礁の再生には、Coral Maker が提供するようなネイチャーテックが必要ですが、再生経済の規模を拡大することも必要です。最近の自然再生市場の急速な発展により、私たちは ESG 投資やインパクト投資を行っている人たちとも話をしています。私たちは転換期に近づいていると思いますし、大規模な生態系の再生が現実になろうとしています。そのことにとてもワクワクしています」とフォスター博士は述べています。

執筆:Autodesk Research シニアディレクター/リック・ランデル

 

Autodesk、Autodesk ロゴは、米国および/またはその他の国々における、Autodesk, Inc.、その子会社、関連会社の登録商標です。その他のすべてのブランド名、製品名、または商標は、それぞれの所有者に帰属します。該当製品およびサービスの提供、機能および価格は、予告なく変更される可能性がありますので予めご了承ください。また、本書には誤植または図表の誤りを含む可能性がありますが、これに対して当社では責任を負いませんので予めご了承ください。

Autodesk and the Autodesk logo are registered trademarks or trademarks of Autodesk, Inc., and/or its subsidiaries and/or affiliates in the USA and/or other countries. All other brand names, product names or trademarks belong to their respective holders. Autodesk reserves the right to alter product and services offerings, and specifications and pricing at any time without notice, and is not responsible for typographical or graphical errors that may appear in this document.

© 2023 Autodesk, Inc. All rights reserved.

Autodesk Japan Communications

オートデスク株式会社 コミュニケーションズチームです。企業情報、製品・サービスからテクノロジーやパートナーシップまで幅広いトピックに関する記事をお届けします。

0 Comments

'